古賀政男から美空ひばりまで昭和歌謡の名曲を慰問演奏。音楽ボランティアグループ“おもひでチューズデー”


































メンバーズブログTOPへ > morichan > 童謡、民謡、そして昭和歌謡への流れ(60) 雨情さんが北海道へ行く頃の日本近代文学の状況 ①


童謡、民謡、そして昭和歌謡への流れ(60) 雨情さんが北海道へ行く頃の日本近代文学の状況 ①

野口雨情さんの北海道行きが決まったのは明治40年(1907年)の夏でありますが、その年の春、雨情さんがパンフレット詩集「朝花夜花」を出して評判になっていた頃あたりから、小説、詩、句、演劇の世界を含めて日本近代文学および日本人の近代的内面の世界の形が整い始めてきたように、もりちゃんは見ております。


それまでの日本近代文学のお話を、少しばかりしておきましょうかな。昭和歌謡は日本近代文学の大きな流れの一支流と、もりちゃんはかねてから考えております(えっ?ホンマかいな!)ので、どうしても語っておかねばなりません。(あれーっ!)


明治維新(1868)から少し経ち始めますと、藩閥政府の専制政治への反発が出てきました。それが明治10年代(1877~1886)には、民権・自由・独立の啓蒙思想による自由民権運動として日本全国に広まったのでありますな。しかし、政府は厳しい弾圧や政党分裂策により強行に鎮めようとしました。この運動に共鳴・参加した多くの人たちは敗れ、そして政治から離れ、個人の内面的世界での独立に関心を持つようになっていったのであります。


その頃に、つまり明治18~19年(1885~1886)に坪内逍遥先生の「小説神髄」や二葉亭四迷さんの「小説総論」の文学論で意識啓蒙がなされ、明治20年(1887)の二葉亭四迷さんの「浮雲」や山田美妙さんの「武蔵野」などで「言文一致」による写実的な動きが始まったのであります。これが日本近代文学の走りでありますな。


明治20年代後半(1892)になりますと、ヨーロッパの18世紀から19世紀初頭にかけて起こった「ロマン主義」が流行りましたな。どんな主義かと言いますと、形式や規則にとらわれず、自由で豊かな感情や想像力によって、自我や個性を尊重し解放しようという文学と芸術の運動なのであります。「実世界」(現実の世界)において功利主義的に幸福や自由を実現するよりも「想世界」(内面の世界)において信仰や愛によってそれらを実現するべきだと主張した北村透谷さん(1868~1894)や新生への想いをみずみずしい感覚表現で追求した詩集「若菜集」を明治30年(1897)出した島崎藤村さん(1872~1943)たちが活躍しましたな。


余談ではありますが、北村透谷さんの透谷っていうペンネームの由来をご存じですか?彼は小田原の出身なのですが、お父さんが大蔵省に勤めるというので一家で上京し、数寄屋橋近くに住んでいました。お母さんが家で煙草屋を営んでいました。ここでもう既にお分かりでしょう?えっ?まだ分らない?煙草屋は関係ありません。はて、はて、はてな?数寄屋橋近くに住んでいたというのがヒントですよ。


透谷の透とは「透いて見える」の「スク」「スキ」。そして谷は「ヤ」ですな。「スキ」+「ヤ」=数寄屋橋の「スキヤ」であります。「ははぁーん」でしょ!それと、余談をもう一つ。彼は、今も数寄屋橋近くにある泰明(たいめい)小学校に通っていたのであります。なんと島崎藤村も泰明小学校に通っていました。泰明小学校はロマン主義小学校ですな。


話をもとに戻しましょう。明治30年半ば、つまり20世紀になると、フランスから「自然主義」が入ってきました。「ロマン主義」の流れを継承して、多くの文学者や知識人に影響を与えました。どんな主義かと言いますと、人間は遺伝と環境に支配されており、それをよく観察・分析することによって人間や社会との関わりを考えようとする主義で、明治39年(1906)に発表された島崎藤村の小説「破戒」がその代表的作品と言われておりますな。


もともと、この自然主義は、理想と現実のギャップが大きくなるという厳しい現実の中で、いたずらに理想を追い求めることの虚しさ(ロマン主義の北村透谷は、この虚しさから明治27年に25歳の若さで自殺しておりますな!)への反省から生まれたのでありますが、自己の内面の自然な生を描こうとして、事実をありのままに直視し、赤裸々に捉え過ぎてしまうあまりに、人生の否定面のみを強調する嫌いがあると言われております。このあたりの日本の内面的精神状況を捉えておくことは、すごく重要で意義深いことだと、もりちゃんは思っております。


もりちゃんの日本近代文学の状況についてのお話は、次回に続きます。お楽しみに!



投稿者 tuesday : 2007年06月03日


トラックバック


このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kayou.org/cgi/mt/mt-tb.cgi/246

★【 熱意ブログランキング 】★12 NPO・ボランティア にほんブログ村 音楽ブログへ ブログランキング

BS blog Ranking  【ブログ探検隊】人気ランキング