古賀政男から美空ひばりまで昭和歌謡の名曲を慰問演奏。音楽ボランティアグループ“おもひでチューズデー”


































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童謡、民謡、そして昭和歌謡への流れ(86) 啄木さんの家族が札幌にやって来た!(2)


雨情さんは札幌農学校の前で小国さんと待ち合わせて、啄木さんが引っ越したという札幌東十六条に向かいました。
「小国さん、東十六条っで、人家などありましたがぁ?」
小国さんも首を振りながら
「そうですね、農学校の裏の奥の方ですよね、人が住むような処ではないでしょう!」
と溜息を吐くように言いました。
「狐か狸しがいねえどごろではねえですが?」
「藪の中ですからね、あの辺りは・・・・」
そう言いながら二人は、農学校の裏手の細い道を入って行きます。日は暮れて、薄寒い風が吹いていました。


十丁程も歩いたところで、雨情さんは立ち止まり、
「あっ、あれ」
と藪の中を指さしました。藪の中に小さく人家の灯りが蝦夷笹の葉の影に見え隠れして揺れています。
「雨情さん、君の紹介で石川君を社長に周旋したが、函館から三人も後を追って家族が来るとは判らなかった。社長からは女や子供はどっかに連れて行けと叱られるし・・・・」
小国さんは重そうな一升瓶を下げて、のしのしと藪の細い道を歩いて行きます。後ろから雨情さんが豚肉の包みを下げながら付いて行くように歩いています。
「すみませんでした。わすも家族が来るどは思っていなかったでやんす」
「困って石川君に話すと、『行くところがありません』と言うし、やっと一ヶ月八十銭で荷馬車曳きの納屋を借りることができたのです」
「えっ、荷馬車曳きの納屋でやんすか?」
「石川君は諦めているからいいようなものの・・・・」
「諦めでいる?でやんすか?」
「ええ、そうです。彼はいいのです。三人の家族達は可哀想なもんです」
「そうでやんすか」


辺りはすっかり暗くなっていました。何かしら心細くなってくるような暗闇です。風で蝦夷笹の葉が揺れる音がします。二人はくねくねと曲がる藪の細道を速足で歩いて行きます。



投稿者 tuesday : 2008年02月14日


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