古賀政男から美空ひばりまで昭和歌謡の名曲を慰問演奏。音楽ボランティアグループ“おもひでチューズデー”


































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童謡、民謡、そして昭和歌謡への流れ(87) 啄木さんの家族が札幌にやって来た!(3)


藪を抜けると、暗くてよく分らないのですが、小屋のような建物がありました。
「ここですよ」
小国さんは雨情さんの不安そうな顔を見ながら言いました。
「いやはや、えらぐ大変なとごろだっぺ」


近づいてみると、納屋ではなく、厩でした。
「こんばんは、石川君、ご在宅ですか?」
二人は、大きな声で挨拶をしながら、厩の中に入って行きました。
「こんばんはでやんす」
そう言いながら、雨情さんは厩の中を見渡していました。
馬がいなくて、厩の屋根裏に板を並べ、その上に藁が積み上げてありました。
「これは、藁置き場だっぺ」
雨情さんは小国さんの背中に向かって小声で言いました。小国さんは黙っていました。


「いやぁ、いらっしゃい。よく来ていただきました」
といって啄木さんの声が後ろから聞こえてきました。雨情さんと小国さんはびっくりして振り返ると、啄木さんは入口の処に立っていました。
「お二人を表の道端でお待ちしていたんですよ。暗いから分らなかった。はっはっは」
啄木さんはにこにこしながら、表の暗闇に向かって手を振っています。
「おーい、もう、お二人は着いておられた」
すると、暗闇から啄木さんの横に、腰の曲がったお婆さんと赤ん坊を抱いた女性が現れました。
「大変お世話になった野口さんと小国さんだよ。こちらが、母です。そしてこれが妻の節子です。背中で寝ているのは、娘の京子です。はっはっは」
啄木さんは妙に明るく振る舞っていました。


「どうぞどうぞ」
啄木さんは、雨情さんと小国さんを導いて薄暗い厩の奥に入って行きます。雨情さんと小国さんは、不安な面持ちで啄木さんに付いて行きます。
「狭いところですが、ここを上がっていただけますか?」
啄木さんは立ち止まり、屋根裏まで掛っている梯子を登るように促しました。雨情さんと小国さんの眼は、梯子を伝って薄暗くてよく分らない屋根裏を見上げました。そして、目線を戻すと、思わずお互いの顔を見合わせていました。
「さあ、どうぞどうぞ」
啄木さんは再度促しました。
雨情さんと小国さんは躊躇しているので、啄木さんは、
「それじゃ、僕から登りますよ」
と言って、身軽に登って行きました。
小国さんは仕方なさそうに梯子に手を掛けて啄木さんに続いて登り始めました。雨情さんも、小国さんに続きました。
「危ないから、危ないから、気を付けてください。はっはっは」


雨情さんが屋根裏に登り着くと、そこは小さいランプが一つ点いているだけで、啄木さんや小国さんの顔も薄暗くてはっきり見えませんでした。




投稿者 tuesday : 2008年02月17日


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