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童謡、民謡、そして昭和歌謡への流れ(97) 雨情さんと啄木さんが書いた小樽日報の記事

小樽日報の創刊号は、10月15日を予定していましたので、雨情さんや啄木さんは、記事原稿を夜遅くまで書いていたようです。二人は三面記事を担当していたのでありますが、啄木さんは、他の新聞をいくつか読んで取材せずに記事を書いていたようでありますな。


「社にて諸新聞より切抜きたる材料により、『浦塩特信』なるものを書けり。新聞記者とは罪な業なるかな」


いけませんな。このようなことは、今でも立派な大手新聞社の記者もやっているようでありますが、マスコミは人に問う報道をしていながら、裏ではこういったズルイ側面があるのでありますな。時代は経過しても本質は変わらぬものでございます。そもそもマスコミというものは、人間の性(サガ)に直結したようなものなのかもしれませんな。


創刊号ではありませんが、3号で雨情さんは、樺太に行った時の体験をもとに「樺太の露人」という記事を書いています。


<我領土内に残留せる露人は、昨年来漸くに西比利亜(シベリア)方面へ引揚げて、今は唯だ三人しか居ないが、是れらも旅費さへあれば先方へ引揚げたいけれど、旅費がないから仕方ないと云って居る。其内二人は家族と共に居残り、一人は単身だが、何か余程悪いことをして来た者と見へて、露都へ送り還そふかと云ふと号泣して此儘置いて呉れろと云ふ様が、如何にも不愍に見受けられるそふだ。>


雨情さんは、「正直なる貧賤」という記事も書いています。これは、偉大な英国スコットランドの国民的詩人ロバート・バーンズ(Robert Burns、1759.1.25.~1796.7.21)の詩について論じたものであります。バーンズは、スコットランド南西部の貧しい小作農の家に7人兄弟の長男として生まれ、農場で働きながら詩作に励み、スコットランド方言を使い、弱い者への愛情や社会的な正義を下地にした詩を多く残しています。大晦日のNHK紅白歌合戦の最後に歌手が大合唱する「蛍の光」のスコットランド民謡の詩は、彼が書いたものであります。ご存じでしたかな?


<英国の田園詩人ロバート・バーンズの「正直なる貧賤」てふ詩の大略を或る雑誌でチラと見て非常に面白く感じた、で諸君にも此の興味を分けようと思うて茲に書いた。
△正直で貧乏したとてチットも構はぬ、卑怯な事さへせなければ善いではない乎、位階なぞで鍍金せんだって人は地金のままで結構だ。
△粗食したって構はぬぢゃないか、粗衣を纏ふたとて、構はぬぢゃないか、美味を食ふたとて美衣を着たとて何んでもない、正直でありさへすりや貧乏しても人の王だ。(中略)
此の詩の中にバーンズ人格はありありと見へて居るではないか、此の詩は確かに時代の悪文明に心酔して居る徒輩が一服の刺激剤である。世の中で何が尊いたって此の心掛け位尊く気高いものがあろうか、そして此の心掛けのない者には終身平和は近寄らぬ。>


雨情さん、なかなかいいことを書いておられますな。自然の中で貧しくせっせと働く農民たちを擁護する詩を書いて、旅をして農民や地域の歌謡を集め、伝統を尊重した民謡を纏める活動は、雨情さんが求めていたものであるかもしれません。雨情さんが自費出版した「枯草」も、そうした同種の思いが託されていたのかもしれませんな。


それから、雨情さんは「新俗謡」の選評をしていますな。選評者の雅号は「烏蝶」、これは明らかに「雨情」を捩ったもので、カラス好きの雨情さんであります。次の首などは、投稿されたものではなくて、雨情さん作によるものであるような気がしますが、如何ですかな?


「船が出ぬなら今宵も一夜、泊めて遣りたい泊りたい」
「蛍ばかりが身は焦しやせぬ、わしも独(ひとり)で身を焦す」



投稿者 tuesday : 2008年08月24日


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