古賀政男から美空ひばりまで昭和歌謡の名曲を慰問演奏。音楽ボランティアグループ“おもひでチューズデー”


































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童謡、民謡、そして昭和歌謡への流れ(108) またもや、小樽日報社内で事件発生!(2)

小林寅吉事務長の拳骨は強烈でした。痩せっぽちの啄木さんは、軽く飛ばされて腰砕けになってよろけ続け、近くの椅子に背中から倒れかかり、腰から床に崩れ落ち尻餅を搗き、おまけに椅子の肘掛で後頭部を強く打ちました。


しばらくの間、拳骨をそのまま握りしめ仁王立ちしている寅吉事務長と尻餅を搗いたまま殴られた頬に手を当てている啄木さんの二人は、固まったかのように動きがありませんでした。まるで時間が止まったかのようでした。僅かに寅吉事務長が肩でしている息と啄木さんの泣き声になる前の鼻の奥での小さな嗚咽、そしてストーブの薬缶に響く湯の沸いている音が聞こえるだけでした。


「・・・・なっ、なんで殴るんだ・・・・」
啄木さんは、悔し涙でいっぱいの眼で寅吉事務長を見上げながら、上擦った声で言いました。
「なにをーっ!貴様、まだ文句があるのかっ!」
寅吉事務長は、まだ顔を真っ赤にしたままでした。
「ここは、暴力新聞社だ!・・・本来、新聞社は社会のためにあるべきだ!その新聞社が、権力を振り回して自分の地位や金のことしか考えない輩に毒されてしまっている!」
啄木さんの声は、泣き声混じりになっていました。
寅吉事務長は思わず啄木さんに近づいて
「貴様は、何が言いたいのだ!」
と大声で言いました。
啄木さんは、寅吉事務長が近づいたので、また殴られるかと思い、一瞬驚いて萎縮したように身を屈めました。そして恐る恐る寅吉事務長の顔を見上げて、殴られるのを恐れながら言いました。
「そう、そうじゃないか!何のための新聞社なのだ、この新聞社は?」
寅吉事務長は、不良少年を諭すように言いました。
「経営を無視して新聞社は成り立たない。高い給料を払っているのに、欠勤ばかりして、前借ばかりして、仕事をしないで何をしているのか分からない奴がいると、こんな小さな新聞社でも組織なので困るのだ。自分のことを棚に上げて人ばかり批判している貴様みたいな小生意気な奴がいると、社会のための新聞社になれないのだ。貴様がいると当社は本当に困るのだ!」
啄木さんの表情が瞬間変わりました。
「こんな新聞社なんか、辞めてやる!」
「貴様、何を言った?」
啄木さんは、立ち上がり、寅吉事務長に顔を近づけて言いました。
「こんな新聞社、辞めてやる!」
そう言って、啄木さんは寅吉事務長を睨みつけて、床に落ちていたマフラーを拾って首に巻きながら、
「あんたなんか、偉っそうな事を言ったって、しがない田舎新聞の事務長じゃないか!せいぜい事務長稼業を尽くしてこの新聞社で身を埋めてください。私は、ここを辞めて、世のため社会のためになる仕事をしますよ。きっと見返してやるからな!こんな新聞社、辞めてやる!」
と捨て台詞を残して新聞社を出て行ってしまいました。


翌日、啄木さんは日記にこう書いています。


<十三日より出社せず。社長に辞表を送る事前後二通、社中の者交々来りて留むれと応ぜず>


そして、20日の日記には、こう記されています。


<二十日に至り、社長より手紙あり、辞意を入れらる>



投稿者 tuesday : 2009年02月01日


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