古賀政男から美空ひばりまで昭和歌謡の名曲を慰問演奏。音楽ボランティアグループ“おもひでチューズデー”


































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童謡、民謡、そして昭和歌謡への流れ(115) 啄木さんの芸者遊び

啄木さんは、札幌や小樽の時と違って、寒くて悲しい、そして浮かばれない毎日を寂しく過ごしていたと思われます。釧路新聞の編集長といっても、当時の釧路の町は小さい町だったので、名士でもなかったのであります。このような北の果てで、過ごしていても、名を成すことはできないと、ひとり火鉢を抱えながら思い始めていたにちがいありませんな。


啄木さんは、面白くなかったのであります。でも、編集長として、それなりの給料を貰っているので、遊びに現を抜かしていたようであります。日記を見ると、その遊び具合がよく分かりますな。


<今夜は(中略)南畝氏の招待を受け、同人と共に六時鶤寅に行った。(中略)小蝶に小奴に春吉、小奴のカッポレは見事であった。釧路へ来てから今夜程酔うた事はなかった。十時半景気よく送出されて帰宿、その儘枕についた。此日社から今月分の俸給二十五円を受取った>(2月22日)


<九時頃、衣川子を誘ひ出して鶤寅亭に飲みにゆく。小奴が来た。酒半ばにして林君が訪ねて来て新規蒔直しの座敷替。散々飲んだ末、衣川子と小奴の家へ遊びに行った。小奴はぽんたと二人で、老婆を雇って居る。話は随分なまめかしかった。二時半帰る。小奴と云ふのは、今迄見たうちで一番活溌な気持ちのよい女だ>(2月24日)


芸者遊びといいますと、もりちゃんは、そんな遊びをしたことがないのでよく分かりませんが、何故か古賀政男の戦後のヒット曲「芸者ワルツ」(作詞:西条八十、唄:神楽坂はんこ、日本コロムビア、昭和27年)を思い出してしまいます。昭和27年(1952年)、洋盤ではパティ・ページ、邦盤では江利チエミの「テネシー・ワルツ」が大ヒットしておりました。美空ひばりを発掘した日本コロムビアの名プロデューサーだった伊藤正憲が、日本的なワルツを作れば売れるかもしれないという着想のもと、芸者歌手の神楽坂はん子に唄わせるワルツの作詞を西条八十に依頼したのであります。西条八十先生は、偉い先生でありましたが、芸者遊びに長けていた御方(?)でありまして、そりゃもうお手のもので「♪あなたの~♪リードで~♪島田も~揺れる♪」とすらすらと書かれたようであります。古賀政男に「あれは、西条先生が作詞、作曲したようなもの」と仰っていたとか。戦後の花街のお座敷ではチークダンスを踊っていたのでありますな。「♪チークダンスの~♪なやましさ~♪、みだれる裾も~♪はずかしうれし~♪」ところが、芸者遊びで大人が浮かれているのは、教育上よくないと、世のお固い方々はこの大ヒットした「芸者ワルツ」を批判し、昭和30年に民放連がその意を受けてこの曲を放送禁止にしてしまったのであります。へぇ~でありますな!おっとっと、話をもとにもどしましょ。


<今月自分の手に集散した金は総計八十七円八十銭、釧路へ来て茲に四十日。新聞の為には随分尽くして居るものの、本を手にしたことは一度もない。此月の雑誌など、来た儘でまだ手も触れぬ。生れて初めて、酒に親しむ事だけは覚えた。盃二つで赤くなった自分が、僅か四十日の間に一人前飲める程になった。芸者といふ者に近づいて見たのも生まれて以来此釧路が初めてだ。之を思ふと、何といふ事はなく心に淋しい影がさす。然しこれも、不可抗力である。兎も角も此短時日の間に釧路で自分を知らぬ人は一人もなくなった。自分は、釧路に於ける新聞記者として着々何の障礙なしに成功して居る。噫、石川啄木は釧路人から立派な新聞記者と思はれ、旗亭に放歌して芸者共にもて囃されて、夜は三時に寝て、朝は十時に起きる。一切の仮面を剥ぎ去った人生の現実は、然し乍ら之に尽きて居るのだ。石川啄木!!!>(2月29日)


啄木さんは酷寒の地釧路にて精神的に丸裸で生きていたようです。即ち、自分に正直に生きていたのですな。それまでは、見栄を張ったり、極端な正義感を主張したり、遠慮なしに返す充てなく人に金を借りたり、本当の自分がよく分からなかったらしい・・・。それなりに周りの人に認められて、金銭的にも楽になって無邪気に芸者と遊び呆けて、肩の荷が随分と軽く感じる毎日を、啄木さんは過ごしていたようであります。


きしきしと寒さに踏めば板軋む
かへりの廊下の
不意のくちづけ


ありゃまぁ、この相手は小奴さんですかな?場所は、小奴さんの家ですかな?いけませんな、啄木さん!小樽にお母さんと妻子を残して来て、こんなことをしていては!


その膝に枕しつつも
我がこころ
思ひしはみな我のことなり


小奴さんの膝の上で、啄木さんは自分のことをどう考えていたのでありますかな?金銭の不自由なく精神的に気楽で毎日を無邪気に過ごしている自分・・・・。そんなことを考えると「俺は、こんなことしていていいのかなあ?」と思ってしまうものであります。



投稿者 tuesday : 2009年08月16日


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