古賀政男から美空ひばりまで昭和歌謡の名曲を慰問演奏。音楽ボランティアグループ“おもひでチューズデー”


































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童謡、民謡、そして昭和歌謡への流れ(123) わすは札幌さ、行くでやんす!


雨情さんと啄木さんは、昼間から酒を酌み交わし、啄木さんの詩を酒の肴にしながら、一時を過ごしました。


「酔い覚めに、外さ出て散歩でもするでやんすか?」
「そうしましょう!」


二人は、そう言って、外に出ました。4月の冷たい小樽の風に当たりながら、ふらふらと二人は散歩しました。


「わたしは、東京に行くことにしました」
啄木さんは、薄曇りの空を見上げながら言いました。
「えっ?そうでやんすか?」
雨情さんは、啄木さんの横顔を見ながら言いました。啄木さんは希望を胸に優越感に浸って清々しい表情をしていました。雨情さんは啄木さんの優越感に威圧されて気後れしているようでした。
二人は暫らく黙って歩き続けました。


「そうでやんすか?東京でやんすか?」
「はい、東京です!」
啄木さんは、また空を見上げました。


「わすは、明日、札幌に行くでやんす・・・」
啄木さんは、見上げた顔を下げて雨情さんに向けました。雨情さんは俯きながら萎れているかのように見えました。
「雨情さんは、札幌で何をするのですか?」
啄木さんは清々しい声で訊きました。
「何をするがって?そうだっぺ、わすには、今のとごろ、新聞社しが、働くどごろはねえです。新聞社は、他に比べで給料がええけら・・・」
「そうか、やはり新聞社ですね、北海道では。北海道は不毛です。不毛なところで生活するには、新聞社しか満足な給料をくれませんからねえ」
啄木さんの声は明るく聞こえます。
「今度の新聞社は、北海道で一番の北海タイムスでやんす」
「北海タイムス?」
「一番でやんす」


「雨情さん!雨情さんも東京に行きませんか?詩を書いて、生活しませんか?つまり、文学者で生活するのです。どうですか?」
啄木さんは雨情さんの背中を叩いて、雨情さんを東京に誘いかけました。
「いや、まだわすには早い。わすは、北海道さ来て、北海道に学んでいねえ。自分が育っていねえ。まっとまっと、自分は北海道に馴染んで深く入り込んで、目いっぱい北海道に漬からなげれべえげねえ。そうでねえど、自分は文学者になんねえ。いい詩は書けねえ」
雨情さんには啄木さんの誘いは見え透いて聞こえていたようで、雨情さんは頑なに自分の意思を啄木さんに伝えました。
「雨情さん・・・・」
啄木さんは雨情さんの自分自身への篤い気持ちに圧倒されたようで、その後の言葉が出ませんでした。
また、二人は暫らく黙って歩き続けました。
その間、啄木さんは自分は雨情さんのように自分に篤い気持ちを持っているかを確認していました。今度は、啄木さんが雨情さんに気後れしていました。


この散歩が、二人が会った最後になったようであります。



投稿者 tuesday : 2010年04月24日


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