雨情さんは、みどりちゃんがシャボン玉のように儚く死んだが故に、是が非でも北海道で頑張って何らかの確実な成果を得ねばならない、と決めていたのであります。
「啄木さんは東京さ行っちまったが、わすはこご北海道で何が何でも頑張んねばなんねえのだ!」
雨情さんは、5月になると、啄木さんに言っていたように札幌で一番の新聞社「北海タイムス」で働いていたようであります。「北海タイムス」は現在の北海道新聞社の前身であります。雨情さんは、どんな記事を書いていたのでありましょうか?
6月23日に、小説家で詩人であった国木田独歩(1871~1908)が亡くなっていますが、雨情さんは27日付の北海タイムスに「噫独歩氏逝く」を書いておられます。そう!国木田独歩は、イギリスの湖水地方を題材に自然讃美した詩を多く残したロマン主義の英国詩人ウィリアム・ワーズワース(1770~1850)に傾倒し、長編の散文詩とでもいえる小説「武蔵野」を残した明治の偉大な文学者でありますな。どこで雨情さんは独歩さんの研究をしたのか?雨情さんは、おそらく自然を愛する詩人ということで、自分と独歩さんは相通じると思っていたのではありますまいか!
「武蔵野」といえば、昭和研究家のもりちゃんは想い出す昭和歌謡があります。「武蔵野詩人」、分かりますかな?野口五郎が唄った歌ですよ!正式には「むさし野詩人」(作詞:松本隆、作曲:佐藤寛、編曲:筒美京平、ポリドール、昭和52年1月発売)であります。
♪繁華街から~♪ 静かな道へ~♪
♪あなたの涙~♪ たどって~♪ 行くよ♪
懐かしいでありますなあ。五郎のお兄さん寛さんが作曲しておりまして、何といっても昭和歌謡の大作曲家筒美京平の編曲、ウ~ン!何とも言えない良さがあります!エレキギターをパーカッションのように使い、ベースの進行は絶妙であります!ストリングスも美しく、流石でありますなあ。まさに筒美ワールドでございます!
♪むさし野~公園~♪ ひとりきり~♪
♪あなたの想い出~♪ 集めたよ~♪
この「むさし野公園」とは、何処でありましょうな?府中市にある公園という説がありますが、これはどう考えても井の頭公園ではないでしょうか?近くに繁華街がないといけませんよね?というと吉祥寺という繁華街から静かな道を通って井の頭公園ということになりますな。ちなみに国木田独歩の「武蔵野」は、渋谷から目黒にかけての景色で、明治時代は鬱蒼とした森が渋谷から目黒方面に広がっていたようでございます。JR目黒駅から歩いて7分のところにある国立科学博物館附属自然教育園は、今も武蔵野の自然の面影を残しているといわれておりますな。
おっと話が逸れてしまいました。雨情さんは、「北海タイムス」に記事は載せていたようでありますが、記録を調べると、雨情さんは実は正社員の記者ではなかったとのことでありまして、いやはや、雨情さんは焦りを感じ、落ち着かない日々を過ごしていたに違いありませんな。
投稿者 tuesday : 2010年06月06日 |