古賀政男から美空ひばりまで昭和歌謡の名曲を慰問演奏。音楽ボランティアグループ“おもひでチューズデー”


































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童謡、民謡、そして昭和歌謡への流れ(134) 報道記者 野口雨情、札幌に参上!

明治44年(1911年)8月18日に東宮殿下(後の大正天皇)が北海道を行啓されるのに伴い、雨情さんは『グラフィック』の報道記者の一員として北海道に派遣されました。雨情さんにとっては、1年と10ヶ月ぶりの北海道でありました。『グラフィック』の有楽社にとって、きっと北海道の事情に詳しい雨情さんを報道記者団に加えた方が、不案内な記者たちだけを派遣するよりは、好都合であったのでしょうかな?


あるいは、もしかしたら、雨情さんは、
「うっひっひ、社長、へっへっへ、実は、お話があるでやんすよ。皇太子様が北海道さ行かれるどいうので、我社から取材班を出すどいう話を聞きやした。へっへっへ、ひっひっひ、社長、わすは北海道に詳しいでやんすよ。なんてったって、わすは、北海道には長く居たでやんすがら。わすを記者としで遣わしていだだげるのなら、随分と働きますがら重宝しますよ、うっひっひ、へっへっへ」
と揉み手をしながら自分を売り込んでいたかもしれません。


北海道には明治14年に明治天皇がご巡幸されて以来、天皇は訪問しておられなかったそうでありますが、そういうこともあって、この明治44年(1911年)の皇太子の行啓には、北海道をあげて盛大にお迎えをしたそうであります。今の札幌の南14条に「行啓通」という名の通りが残っておりますが、それは、その時の行啓の際に皇太子がお通りなられたのを記念して付けられたのであります。


札幌の民衆が日の丸の小旗を振って迎える光景を報道記者として眺める雨情さんは、
「こーたに北海道の人が喜ぶごどは実に珍しいよなあ。わすが札幌にいたどぎは、こんなこどはなかったでやんすよ」
と心の中で感動していたようであります。雨情さんの眼には、札幌の街が輝いて映っていました。


♪時計台の~♪ 下で逢っ~て~♪
♪私の~恋は~♪ はじま~り~ま~した~♪


そうそう、札幌が輝いたと言うと、思わず石原裕次郎の歌『恋の町札幌』(作詞・作曲:浜口庫之助、編曲:小谷充、テイチクレコード、昭和47年5月発売)が流れて来そうであります。昭和47年(1972年)2月に冬季オンリンピックが札幌に来まして、札幌が輝いた時に、札幌ブームが起こり、札幌をテーマにした歌謡曲が何曲か作られ、そのうちの1曲がこれであります。思い出しますなあ!70メートル級のスキージャンプ(今で言うところのノーマルヒル)で、笠谷と金野と青地の3人が金銀銅を独占しましたですなあ!「日の丸飛行隊」なんて言いましたな。それと、フィギャースケートのジャネット・リンちゃんは可愛かったです。尻餅をついて銅メダルでした。懐かしいですな。


雨情さんは、皇太子のパレードが通り過ぎて行った後、感慨を抱きながら札幌の町を散歩したかもしれませんな。その時の雨情さんの心象風景は、どんなだったでしょうかな?


♪淋しい時~♪むな~しい時~♪
♪私は~いつも~♪ この町に~来~る~の~♪
♪どこかちが~うの~♪ この町だ~けは~♪
♪なぜか~♪私にやさしくす~る~の~♪
♪恋人なのね~♪ 故里なのね~♪
♪ありがとう~♪ 私の~♪ 恋の町~♪ 札幌~♪


雨情さんにとって、札幌の町は「♪どこかちが~うの~♪、この町だ~けは~♪」と映っていたに違いありません。雨情さんは、皇太子取材の出張期間が終わったにもかかわらず、札幌に暫く留まっていました。東京に出ても詩人でなく相変わらず記者として喰っていくしかない雨情さんは、そんな東京に帰りたくなかったのかもしれませんな。


雨情さんが、北海道に留まって東京に帰ろうとしなかった時に、故郷茨城の磯原の実家から東京の自宅に呼んでいた母親てるさんが危篤の状態でした。懐かしさのあまり北の地を彷徨っていたからか、連絡が遅れ、雨情さんは慌てて帰ったのですが、既に遅しで、母の死に目には会えませんでした。母親のてるさんは、雨情さんが詩人として名を成すことを願っていた唯一の人でした。雨情さんの詩人を目指す気持ちは、この時を境に萎れていくようでした。それはそれは心からの理解者である母を亡くしたのは精神的に大きな衝撃だったのでしょう。さらに、追い打ちをかけるように、翌年3月には勤めていた雑誌『グラフィック』が休刊となってしまいました。


「むぺ、こりゃあ、駄目だ。しゃあんめえなあ。故郷へ引っ込むどするが・・・。むむむっ、残念至極でやんす。つらいでやんす」



投稿者 tuesday : 2011年10月30日


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