古賀さんが恋仲になった女性というのは、中島梅子さんという人で、古賀さんよりは年上でバツイチでありましたが、八頭身の美人でかつグラマーあったとか。音感も素晴らしく鋭く、絵も描くという芸術派で魅力的な人であったのでしょうな。昭和3年夏頃には、スカート丈が膝上まで短くなっていたから、そういう流行には敏感な女性であったことが窺えますな。そのような美しい女性から「師弟を越えた関係になりたい」なんて言われたら、学生の古賀さんだけでなく、多くの男性諸君は瞳をハートマークにして卒倒してしまいます。
古賀さんと梅子さんは、神宮外苑で初めてのデートをします。レッスン中やデートの時など、梅子さんの古賀さんを見る眼は「妖しい熱を帯びてきた」という程、梅子さんは実直熱烈な想いを古賀さんに投げかけていました。次第に古賀さんも、その熱意と妖艶さに心を奪われていったのでありまして、何度か求婚しようと迷ったらしいのです。
その中島梅子さんの出自はよく分かりませんが、古賀さんは「梅子さんはハイブロウなひとでした」というように、教養があって知的であったということでしょうから、おそらく家柄がよい人だったのでしょう。でも、まだ学生で就職も決まっておらず、しかも境遇の違いがある。結婚しても、うまくやっていけないのではないか。古賀さんは、悩んで悩んで悩み苦しみ、懊悩したあげく、別れることにしたというのです。古賀さんは、彼女との境遇の違いや自分の前途を悲観しながら絶望の淵に立ち、仙台と蔵王の旅をしていたと、もりちゃんは推測しております。
投稿者 tuesday : 2006年06月18日 |