古賀政男から美空ひばりまで昭和歌謡の名曲を慰問演奏。音楽ボランティアグループ“おもひでチューズデー”


































メンバーズブログTOPへ > morichan > 童謡、民謡、そして昭和歌謡への流れ(70) 啄木さんの処女詩集「あこがれ」


童謡、民謡、そして昭和歌謡への流れ(70) 啄木さんの処女詩集「あこがれ」

雨情さんは朝ごはんを食べながら啄木さんの話を聴いています。
啄木さんは味噌汁を啜り、お椀を置くと、雨情さんの方を向いて、
「雨情さんは、私の処女詩集『あこがれ』をご存知ですか?」
と訊きました。
「存じ上げているでやんすよ。『明星』に載った詩を集めた詩集で、評判がよくて明星派の新進詩人として石川啄木さんは『天才少年詩人』と絶賛されましたでやんすね。」雨情さんは歯が浮きそうなお世辞を言いました。
「はっはっはっ!あれは私の青春の記念碑ですよ。人間は愛が無ければ生きていけない。愛を媒介にして俗悪で矛盾したこの世という現実を超越するのです、そして愛は天の霊界と一体化しているのです、なんてね。これがこの詩集のテーマです。はっはっはっ!」
啄木さんは、お世辞だと理解しない様子で高笑いをして、ご飯を口に入れました。
「はあ、高尚でやんすね。その愛とは、男と女の愛でやんすか?」雨情さんは、素朴な質問をしてみました。
「はっはっはっ!雨情さんは、男と女の愛にご関心が?はっはっはっ!」
「いえいえ、わすは愛という言葉がピンと来ないでやんすよ。女は冷たいでやんす、薄情で怖いでやんす」雨情さんは、樺太への愛の逃避行が挫折した青森の船乗り場での苦い経験を思い出して、そのように答えたのかもしれません。
「はっはっはっ!私は、その頃今の家内の節子と婚約をしたばかりで」
「そっ、そうでやんすか?奥さんとの愛でやんすか、やはり女との愛でやんすね」雨情さんは、殆ど朝ごはんに手を付けずに啄木さんと話を続けます。
「はっはっはっ!異性への『あこがれ』とも言えますかね?はっはっはっ!あの詩集には、上田敏先生に序詞を書いていただきましたし、与謝野鉄幹先生には跋文を贈っていただきました」啄木さんの持つ箸は、また漬物に伸びていました。雨情さんは啄木さんが漬物を口入れるのを見届けてから、
「いやいや、それは大したもんでやんす」と答えるしかありません。
「実は、政治家でありながら文人でもあられる東京市長の尾崎一雄先生に直接お会いして、お願いしたのですが、詩よりも学問が大切だと言われて追い返されたも同然の扱いでした。はっはっはっ!ちょっと調子に乗り過ぎました。はっはっはっ!」
「へーぇー、咢堂先生に直接お会いになった」雨情さんは自分も民謡詩集「枯草」を出版したが、一部で高い評価を得たものの、啄木さんの方が世間の評価が高いことをはっきりと自覚していました。「この男、自慢しに札幌までやって来たでやんすか?」そのように思いながら、大きく口を動かして朝ごはんを満足そうに味わっている啄木さんの横顔を眺めていました。

啄木さんは自慢をしに来ただけなのでしょうか?この続きは次回に!



投稿者 tuesday : 2007年09月16日


トラックバック


このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kayou.org/cgi/mt/mt-tb.cgi/283

★【 熱意ブログランキング 】★12 NPO・ボランティア にほんブログ村 音楽ブログへ ブログランキング

BS blog Ranking  【ブログ探検隊】人気ランキング