古賀政男から美空ひばりまで昭和歌謡の名曲を慰問演奏。音楽ボランティアグループ“おもひでチューズデー”


































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童謡、民謡、そして昭和歌謡への流れ(83) 啄木さんが札幌の雨情さんに会いに来た理由(1)

「函館の大火事は、とにかく大騒ぎで、いやはや、気が動転していたこともあって、記憶が変になってしまって、はっはっは、はっはっは、・・・・」
啄木さんは、自分の話の辻褄が合わないことを雨情さんに指摘され、頭を掻きながら、例の大声で高笑いをして気まずさを払おうと必死でした。
「ところで、啄木さん、朝早ぐから、わすにどんな御用があっで来られだのですがぁ?」
雨情さんは、まだ頭を掻きながら笑っている啄木さんに尋問するような声で訊いてみました。
「はっはっは、・・・・えっ?・・・へぇ・・・、その、・・・あの・・・・」
しばらく啄木さんは答えられずに居ました。雨情さんは、さらに尋問を重ねました。
「こんなに朝早くから、訪ねで来られだには、きっど深い訳があるに違いないでやんす。そうだっぺ?」
「はあ、いやはや、その・・・、そのとおりでございます」
啄木さんは、俯いて、自分の後頭部を手のひらで数度叩きながら、照れくさそうに答えるのでありました。


「実は、野口雨情先生!」
突然、啄木さんは、雨情さんの方に向きを変えて正座をし直し、真面目な顔つきで低い声を出しました。
「なっ、なんでやんすか?突然改まっだりしで・・・・」
雨情さんは、啄木さんの異常さに少し怯えながら、背を反らせて、啄木さんから距離を置こうとしました。
「野口雨情先生に、お願いがありまして、朝早くから失礼も承知の上、参上した次第であります」
啄木さんは、手をついて深々とお辞儀をしております。
「お願いっで、なんでやんすか?」
「お聞きいただき、誠にかたじけなく存じ上げます」
今度は、啄木さんの方が雨情さんに強く迫っているかのようであります。


「函館で新聞記者として頑張ろうと思っていたのですが、大火事に遭って、その夢も崩れてしまいました。札幌に行けばその夢を実現できると思って、小学校の代用教員を辞めて、早速、札幌に出てきました。実は、私や家族は、今まで札幌に住んでいた宮崎郁雨という親友に困った時によく面倒を見てもらっていたのでありますが、その彼が旭川の連隊に一年志願兵として入隊してしまっていたものですから、札幌では頼る人もいなくて、このような性格を持った私のような者に好意を持ってくれる人は、残念ながら誰一人としていません。私は全くの孤立の身であります」
啄木さんの眼には、また涙が溢れていました。


この続きは次回に!今年の連載は、今回までです。来年も、ご愛読をよろしくお願い申し上げます。



投稿者 tuesday : 2007年12月31日


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